正直ビヤホールでサッポロビール(浅草)
以前からお店の存在は知っていたのだけれど、どこにあるのかさっぱり分からず未訪だった。何度かお店があるはずの場所を通ったのに見つけられない。摩訶不思議なお店である。
この日も「そういえばあのお店はいったいあるのだろう」と周辺をうろうろしていると、ひとりのおばあちゃんがカーテンのかかった扉にゆっくり吸い込まれていった。まさか、ここか。これは分からない。
カーテンの隙間から中をのぞくと先客は2人だけ。勇気を出して入ってみる。
ひとり、だいじょうぶですかと尋ねると、割烹着姿の女将さんが
「奥へどうぞ」
とすすめてくれて、ひと安心。
「おにいさん、入るか迷ってたでしょ。店の前をうろうろしていたもんね」
と指摘されて、あたふたしてしまった。
思えば店のルールも知らずに入ってしまったのだが、隣に座っていた同じくこの日が初めてだという紳士がいろいろと教えてくれた。
メニューはビールだけ。一杯だけは禁止。ビールを注文すればつまみもついてくる。玉子がおいしい。よーし、だいたい分かった。もちろんメニューもなくて、棚に貼られたポップは一枚だけ。
一杯はダメよ!
二杯はお別れ
三杯は身を切る
四杯はごきげんよう
五杯はごきげんよう
六杯目からは
さぁガンガン呑もう!!
という威勢のいい言葉が書いてある。
とりあえず一杯目をいただく。女将さんもしっかり飲んでいて、乾杯をしていただく。ビールはサッポロらしい。ビアサーバーにもこだわりがあり、以前はキリンだったのをサッポロに変えたらしい。ちなみにアサヒは大嫌いなんだそうだ。
最初のおつまみは「6Pチーズ」。いやあ、いさぎよい。とにかくしっかりビールを飲む場所なんだろう。
女将さんはまさに江戸っ子という感じで好き嫌いがはっきりしている。浅草でもこの場所は嫌い、この店はダメとはっきり言う。逆に好きなものはものすごくおすすめしてくれる。
二杯目は「魚肉ソーセージ」。紳士がおすすめしていた「ゆで玉子」は三杯目ということで、餌をぶら下げられてしまっては注文せざるをえない。
女将さんは相当なお話好きのようで、どんどん話題を振ってくれるし、どんどんいろいろな話をしてくれるから、まったく暇にならない。そうなると「じゃあそろそろ」というタイミングがなく、どんどんとおかわりをしてしまう。そんなシステムなのだろう。
そんなわけで四杯目。「歌舞伎揚げ」と「お好み焼さん太郎」をいただいた。二軒目だったのでさすがにお腹がいっぱいだ。隣の紳士が帰るというタイミングでいっしょに店を出ることにした。
お会計は4杯で2,400円。1杯600円の明朗会計である。来月から消費税増税で700円になるらしい。
こんな楽しい世界がこんなところにあったのだな。炭酸ガスで膨らんだお腹が苦しい。また来よう。