主に浅草で食べたものを記録していくよ

優柔不断な無職がかわいい猫についてや、食べたものについて書いています。


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象にのったら現実を突きつけられた話

数年前に仕事でタイに行ったとき、空いた時間に街をブラブラしていたとき、目ざとく日本人を見つけたおっさんが、「象のれるよ」と声をかけてきた。

 

特にやることもなかったので、ほな、まあちょっくらよばれてみますかなと象にのった。30分コースで2000バーツだか払って乗り場への階段をのぼる。既に象がスタンバっていて、2階からだとちょうど象の背中に乗りやすい高さに合わせてある。象の首あたりに少年が座っていた。なるほど、これが象のりの少年か。

少年に導かれるままに象の背につけられたベンチに座る。「象にのってるなあ」と思った。時折止まる象に少年は鎌を突き立て「進め、進め」と言っている。そんな光景を「象も大変でおますなあ」とぼんやり見ていた。

 

10分ほど象に揺られていると、少年は鎌を象の耳にひっかけ、懐から草とナイフを取り出した。そして草を器用にカットし、茎を巻きつけて見事なバッタを作った。できあがるとそれを僕に差し出してくる。Thank youと言った。

 

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それから彼はTシャツからプラスチックケースを取り出した。Souvenirと言う。中にはブレスレットなどの民族風な手作り装飾品が入っていた。買えってことだ。

 

「How much?」

「400バーツ」

 

約1000円。高い。「No thank you」、悪いねって断った。

 

象はずんずん進み、30分コースも終盤に差し掛かる。右手のほうに車のタイヤで遊ぶ幼い子供たちが見えた。象のり少年は彼らに一言、二言声をかける。彼らのお兄ちゃん的存在なのだろうか。

象は左へ曲がり、子供たちに背を向ける。すると道の両側に藁葺きの家が連なっている。家の前には貯水タンクがあり、そこから水を出して洗濯物をしている。つまりここは象の散歩コースであり、彼らの居住空間なのだ。家の中はむき出しになっているからこちら側から丸見えで、彼らの家族が豆電球のしたでご飯を食べていた。最後にそんな光景を見せられ、しばらく進むと終着点。30分コースが終わった。

 

象から降りる際に少年に100バーツのチップを渡した。少年はボクのほうを見ようともしなかったし、特に言葉もなかった。なんちゅうか、見限られたんだなって思った。別にこっちが何か望んでいるわけじゃないのでこの表現があってるのかはわからないけれど、少なくとも金を落とさない人間にサービスする筋合いねえよと目が語っていた。もっと言えば蔑まれてた。日本人のくせに400バーツも落とせねえのかよって。あんな諦めた目ひさしぶりにされたよ。もうこの先一生、象にのることはないだろうなと思った。という話。

 

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ではまた。