匠家で飛騨牛握り(岐阜県・高山)
飛騨牛の串焼きを食べた結果、飛騨牛中毒と化してしまった僕は飛騨牛の握りを探した。「探した」というのは飛騨牛の握りを提供する店は無数にあって、しかしその全てがおいしいわけではないんじゃないかと考えたからである。価格帯が似たようなものであれば、少しでもおいしいものを食べたいと思うのは自然な感情だと思う。
そうしてこの店に辿り着いた。ここを選んだ理由は肉屋だったからである。隣が肉屋で赤身の肉を売っている。そしてさらにその隣は焼肉店となっていて、大層繁盛していた。握りは外のカウンターから注文できる。
既にたくさんの人が握りや牛串をいまかいまかと待っていて、飛騨牛に対する熱気がムンムンだった。ということで注文してから15分ほど待って、ようやく握りを受け取ることができた。
シャリと合わせるなら赤身のほうがよいかなと、トロのほうではなくて通常の握り寿司(500円)を注文したのだが、脂はしっかりとのっている。少し炙ってあるようで甘い脂が溶けつつ、さらに甘めのタレがかかっている。さすが肉屋の飛騨牛、シャリは少しべちゃつきがあったが、肉の旨味が補って余りある。
これで飛騨牛欲はかなりおさまったが、これ焼肉だったらもっと幸せだったろうなと思う。次回こそは。
六拾番で飛騨牛串焼き(岐阜県・高山)
一本1000円である。当日は天気が良く、5月初旬というのに少し汗ばむほどの陽気だった。少し惚けていたのだと思う。確かに飛騨牛は食べたかった。しかし飛騨牛の串焼きを売っている店舗はたくさんある。それでもここで購入に踏み切ったのはこの1000円という価格設定だったからだろう。
はじめに言っておくが、おいしかった。とてもおいしかった。それだけは間違いないし、後悔はない。
しかしながら、普段塩や味噌をなめて日々を過ごしている自分がなぜこのような暴挙に出てしまったかは記憶が曖昧で覚えていない。なぜ「厚切り」のほうを選んだのだろうか。あの日の僕は躊躇することなく、夏目を一人差し出していたのである。
写真をご覧いただければ分かる通り、一本ずつ注文を受けてから焼いてくれる。適度な脂がのっていて、塩加減も最高だ。さすがA5、脂が甘い。おいしい。たまらん。
おおよそ100g程だっただろう。そのくらいの肉はものの30秒でなくなってしまう。おいしい。どんどん食べたい。あれもう半分ない。でもまだ半分ある。食べよう。あれ、もうない。1000円がもうない。
こんな貧乏人の戯言をつらつらと書いてしまって大変申し訳ない。おいしかったからこその儚さ。僕は30秒の夢を買ったのである。富豪のみなさんは10本くらい頼めばいいと思うよ。