遭遇、セックスばばあ
さっき道を歩いていたときのこと。
僕が歩きスマホをしていると視界に突然自転車があらわれた。慌てて立ち止まり「すいません」と言って立ち去ろうとしたら、自転車に乗っていたおばさんは僕を睨みつけ、
「ちょっと待ちなさい」
と言う。
厄介なことになったなあなんて思いながら、こちらに非があるので素直に立ち止まる。するとおばさんは僕の不注意を咎め始める。
「歩きながら携帯なんてしていたら危ないじゃない!」
別にぶつかったわけでもないんだから、とは思ったがややこしくなりそうだったので、「確かにそうっす。すいません」つって、なんとか切り上げようとする。しかし、おばさんは一向に僕を離してくれない。
「なんで携帯見て歩くの!危ないじゃない!」
それさっきも聞きましたとは言えないのですいませんでしたと繰り返す僕。ひたすら怒るおばさん。ひたすら「危ないじゃないの!」と繰り返すおばさんの表情がだんだんと狂気を帯びてきて、少し怖くなってきたところで、さらにおばさんは畳みかけるように言った。
「じゃあ、うちに来なさい!」
え、なんでですかと単純な疑問を投げかけてみても、今度は壊れた人形のように「うちに来い」という同じフレーズを繰り返すおばさん。
僕は思い切って「あなたの家に行ってどうしようっていうんですか」と聞くと、間髪入れずにおばさんは
「お詫びに私を抱きなさい!私とセックスしなさい!」
と叫んだ。
見方を変えればエロゲのような展開ではある。だが、目の前にいるのは50歳は過ぎているだろう小汚いおばさんだ。さすがにそれはちょっと御免被りたい。昔はやたら怒ってくるおじさんがいて、勝手に「なんとかジジイ」なんてあだ名をつけていたのだけれど、このおばさんだったら「セックスばばあ」だろうか。この辺の子どもにとっては見慣れた存在なのかもしれない。
「昨日セックスばばあと会っちゃってさあ」
「マジかよ!おまえセックスしたのかよ!」
「してるわけないだろ!」
「したんだろ~。きめぇ~。マジきめぇ~」
「してないって言ってるだろ!」
「うわあ!こいつセックスばばあとセックスしたんだってー!」
「してないよ……してないよ……」
というイジメがあるのかもしれない。怖い街だな。
僕もセックスばばあとセックスをしてイジめられたくはないので、そのまま少し先の交番に向かったらセックスばばあはどこかへ消えてしまった。
しかし、セックスばばあは本当にいたのです。次はあなたの街に現れるかもしれません。
ではまた。