日本酒の辛口が好きと言って恥をかいた話
日本酒が好きだ。専門的なことは分からないが、味が好きだ。単純に美味いなあと思う。
ところで日本酒の味を表現するときによく「辛口」と「甘口」で表現される。これは日本酒度と呼ばれる糖分の量を計測して表される値によって分類される。糖分の量が少ないとプラスとなり辛口、逆に多いとマイナスと表示され甘口になる。
はじめの頃は「なるほど、辛口はすっきりしているんだな」なんて思っていたのだけれど、いろいろな種類の日本酒を飲んでいるうちになんだか分からなくなってしまった。すっきりしていても辛口だってあるし、酸味があっても甘口だったりするからだ。
だから最近はそんなのはあまり気にせずに飲んでいる。そのときに美味しけりゃあいいやと思っている。
日本酒コンシェルジュの方に言われたこと
ある日、妻と日本酒の品揃えが良い評判のお店で酒を飲もうとなった。そこは日本酒コンシェルジュの方がいるらしく(そういう資格があるかどうかは知らない)、好みの日本酒を見立ててくれるところらしい。
都内でも指折りの日本酒が充実した人気店で常に満席らしいこの店は、コンシェルジュの方が日本酒を懇切丁寧に説明してくれる。早速、僕たちもその方におすすめを聞いてみることにした。
「一杯目になにか良いお酒はありますか?」と尋ねると、できれば好みを言ってほしいと言う。なるほど。
「では辛口で何かオススメはありますか」
「えーと、辛口っていうのは味がないってことなんで、それだけだと選べないですねえ」
辛口は味がない!
とても驚いた。
先に言っておくが、この店員さんはとても愛想がよくて、日本酒がとても好きな方だ。だからこれは嫌味で言っているわけでもなんでもなくて、本当に純粋に美味しい日本酒を選んでくれようとして言ってくれているのである。いやマジで。某口コミサイトでも評判の良い店員さんです!
話を戻して、「辛口は味がない」の意味について詳しく聞いてみると、辛口とは日本酒の味の話ではなくて、美味さはグルタミンによる旨味と酸度によって生まれるらしく、単純に「辛口」「スッキリ」という形容では、「ただ味のない日本酒」ということになってしまうらしい。
「じゃあ好きな日本酒を教えてください」
「えーと、●●とか好きですね」
「あー、それも味ないやつだ」
味ないやつ言っちゃったー!(銘柄はいちおう伏字)
もはや僕に日本酒を語る口は持ち合わせておらず、最終的には小声で「じゃあ、旨味のある日本酒を……」と言うしかなかった。
「では旨味成分の少ないものから順に出していきます。ちょうどいい美味しさのところで教えてください。それがお客さんの好みになりますので、そのあたりでオススメを出していきますよ」
とのこと。
なるほどー。
そして美味しい日本酒をたくさん飲ませてもらうことができた。日本酒の味の表現というのは難しい。日本酒好きって面倒くさいなあと思われるかもしれないけれど、「辛口」という表現では幅が広すぎるということなんだろうと思う。
「グルタミンがねー」なんて言う必要はないけれど、あまり「辛口」「甘口」という表記にこだわらず、たくさん飲んで自分の好みのお酒を見つけることが大切なのかな。
そんじゃーねー。