スガキヤのラーメンって美味しかったんだな
先日、あるラーメン屋さんへ行った。そこは超有名店で当然のように行列ができており、某レビューサイトでの評価も非常に高いお店だ。名前は知っていたのだが、行列の長に臆していままで避けてきたのだが、今回は時間に余裕があったため最後尾に並んだ。
ネットで口コミを調べてみると
「これぞ東京のラーメン!」
「どんなラーメンを食べてもこの味に帰ってくる」
「このスープは飲み干せる」
などの言葉が並ぶ。東京のラーメンブームの先駆け的な店舗らしく、客からの信頼度の高さを伺える。
そんなレビューを読みつつ、期待しながら行列が進むのをいまかいまかと待っていた。どうやら回転率の良い店らしく、約20人の行列はもの15分ほどでなくなり、そして僕の後ろにはさらに20人ほどの行列ができていた。とんでもない人気店だ。
入店し食券を店員さんに渡す。はじめてなので一番ベーシックな看板メニューを頼んでみた。お値段は1000円と少々高めだが、東京のラーメンで1000円は珍しくない。
回転率の良さを示すように食券を渡して5分ほどでラーメンが運ばれてくる。期待に胸を膨らませ、まずはネットの口コミでももっとも評判のよいスープを一口すする。
(あれ?これどこかで食べたことがある味だな)
もう一口すする。そして麺を箸でひとつかみし、ずずっと口に放り込む。
(あれ?この麺も食べたことあるぞ?)
そうなのだ。麺を食べるたび、スープすするたびに、なぜだか既視感(既味感とでも言うのだろうか)がおそってくる。しかし、このラーメンを食べるのは間違いなく今日がはじめてのはず。似たようなラーメンを食べたことがあるのか。いや、もっと強烈な体験じゃないとここまで味を覚えていないはずだ。なんだ。どこで食べたんだ。
と、ひとしきり悩みながら食べ続けた結果、ついに原因が分かった。
これ、スガキヤのラーメンだ。
スガキヤとは名古屋あたりを中心に展開しているラーメンと甘味を中心に提供しているチェーン店である。僕は関西の出身だが、近所にダイエーにスガキヤが入っており、よく母親とダイエーに買い物に訪れてはスガキヤでラーメンを食べさせてもらっていた。その懐かしの味が今回蘇ったのだ。東京の超有名店で。
これ。
確か当時、280円だかで食べてた記憶があるんだけど、いま値段確認したらいまだに300円だった。すごい。このご時世に。あの幸楽苑でさえ屈したコスト上昇の波にいまだらに抗っている。とんでもない企業だ。
ここまで読んだ皆様方におかれましては僕のことを、1000円の超人気ラーメンを食べて300円のスガキヤの味を思い出す味覚障害だとお思いでしょうが、まあ別に間違ってはいませんが、ここは発想の転換で、スガキヤのラーメンが300円のクオリティじゃないくらい美味いのでは、と前向きに考えていただきたい。
そりゃあ、1000円のほうが味は複雑だし、チャーシューは美味いですよ。でも味の方向性は同じなんじゃないかなと。これぞ東京ラーメンと評価されている味とスガキヤラーメンの味の方向性は同じだと、そう申し上げておる次第であります。
あとラーメンの美味しさってもう何周もぐるぐる回ってて、いま流行りがどこにあるかなんてラーメン好きじゃない一般人は分からないから、これぞ東京ラーメンと言われてもわかんないし、たぶんその東京ラーメンも「これぞ」って言われてるぐらいだから、もう数周まわってからの「これぞ」なんだろうし、でもこっちからしたらもともとの東京ラーメンってなんだよって話だし、魚介豚骨とかニボニボとか、訳わかんないよって話でした。
スガキヤは東京に店舗がないようなので、あの味を東京でもう一度と思っている方は「元祖東京ラーメン」的なお店で1000円出せば食べられるかもしれません。
ではまた。