魂が震える青春マンガ「G戦場ヘヴンズドア」(※ネタバレ有)
漫画家を目指す作品と言えば「バクマン」が有名ですが、「G戦場ヘヴンズドア」はさらに刹那的でそれ故に情熱的に2人の高校生がマンガに相対する姿を描いた作品です。複雑に交差する人間関係の中で2人が出会い、自分たちが生きる意味を必死で追い求める姿は読んでいて息が詰まるほどです。そんな作品を紹介したいと思います。
※ネタバレ有。ご注意ください。
この世界で、一緒に汚れてやる。
主人公は、大人気漫画家を父に持ち、そんな父に反発しながら小説家を目指す堺田町蔵。そしてマンガだけを頼りに生きてきたが、ある事件がきっかけで「もう言いたいことがない」とストーリーを作れない長谷川鉄男。ストーリーはそんな二人が出会い漫画家を目指すところからはじまります。
二人がマンガを描き始めたころ、ひょうんなことから鉄男が幼い頃に出て行った父親であり、鉄男が「からっぽ」になってしまった原因である男が二人の前にあらわれます。町蔵の父、坂井大蔵のマンガを打ち切ろうとする少年ファイトの編集長として。
大ヒット漫画家を父にもつ堺田町蔵と冷酷な編集者を父にもつ長谷川鉄男。お互いを求め合いながら反発しあう、二人の青春物語です。
父親への感情
なんとか漫画賞への投稿作を書き終えた二人。結果は佳作入選。審査員をつとめていた父親、坂井大蔵に認めてもらえるかもしれないという淡い期待を持って、授賞式に出席した町蔵だったが、そこで意外な事実を知ることになります。
受賞の席で町蔵ではなく鉄男を抱きしめる坂井大蔵。
坂井大蔵は鉄男が小学生の頃に出会っていました。漫画家をやめようかと悩んでいた大蔵は鉄男が当時描いた漫画を見て衝撃を受け、鉄男へまたマンガを描いてほしいというメッセージを伝えるために漫画家を続けていたのです。
事実を知った町蔵。二人は擦れ違っていきます。
からっぽの鉄男
鉄男は天才的なマンガの才能をもちながら、母親にそれを否定され、それ以来ストーリを考えられなくなってしまいます。母を捨てた自らの父親であり、大人気少年漫画誌「少年ファイト」の編集長である阿久田鉄人を憎みながらもマンガを捨てることができない葛藤に苦しみます。そしてそれはやがてマンガを憎むことにつながっていきます。
母親の死に直面した鉄男。だが父親である阿久田鉄人はそんな鉄男に「ネームはできたのか?」と言い放ちます。
町蔵の成長
そんな中、ひとりでマンガを描き始めた町蔵はたくさんのマンガに関わる人たちと触れることで、自我を成長させていきます。
鉄男がうらやましくなったことを正直に認め、父親である坂井大蔵の著作とはじめてまっすぐに向き合うことにした町蔵。そうしたときにはじめて坂井大蔵が人気漫画家である理由を知るのです。
擦れ違う二人がまた交わる日はくるのか
少年ファイトでの連載がはじまり人気漫画家の地位を不動のものにしていく鉄男。しかし彼の精神は確実に歪み、病んでいきます。
マンガに蝕まれ、父親や信じていた人が離れていく状況に追い込まれた鉄男が最後にSOSを出したのは町蔵でした。
オレ達のこれからのすべてに、期待するよ。
ラストはぜひ読んでいただければと思っています。町蔵と鉄男だけではなく、他の登場人物すべてが濃い作品なので、読み終わったあとはこれで18話かとびっくりすると思います。
作者がいま連載している「少女ファイト」でも同じくですが、それぞれの登場人物にストーリーと意志が練りこまれていて、それが絡み合うためにどうしても濃密な人間関係が描かれることになります。ともすれば読み手を選ぶ可能性もありますが、それでもこの「G戦場ヘヴンズドア」は読んでほしい作品です。何かをチャレンジしようと思っている人には勇気を与えてくれる作品です。
町蔵と鉄男のその後
一部、スターシステムが取り入れられており、二人のその後は一部「少女ファイト」で見ることができます。もちろん「少女ファイト」もおすすめです。
ではまた。